出資持分のある医療法人を経営しています。事業承継に関する対策を講じなくても大丈夫でしょうか?

相続税の納税資金対策や財産評価引き下げ対策を、早い時期に始めるのがいいと思われます。

平成19年に制度改正が実施され、出資持分のある医療法人については、その形態が当分の間、維持されるのですが、同年4月1日以降、新設することは不可能になりました。それゆえ、解散時の残余財産は国等へ帰属することとなりました。
ある医療法人において、理事であり、かつ医師であった妻が3年前に亡くなりました。現在は、夫である理事長が先頭に立って病院を経営していて、後継者である息子もその病院の医師であるという状況です。立派な息子なのですが、理事長には頼りなく映ったのかもしれません。「息子には今の病院を継がせるだけの能力がない」と、理事長が日頃から言っていました。
理事長があるときから、「うちの病院を出資持分のある医療法人から、持分のない医療法人に移行する」というようになりました。持分のない医療法人への移行は、出資に対する財産権がなくなってその分の純資産が国等へ帰属すること、すなわち、それまで蓄積した病院の財産を放棄することを意味しています。約150億円の病院の純資産を放棄するというのは、とても驚きました。そして、息子がとても優秀であり、理事長として病院を経営するようになったら、それなりの人物になると予想されることから、なおさら驚いたのです。
ただし、持分のない医療法人への移行もやむを得ない大きな問題が、一つ存在していました。それは、「相続税」の問題です。
妻が亡くなった際の相続税や将来理事長が亡くなった際の相続税のことを考えたら、以後支払うことになる数十億円の税金が納付可能か否かは、未知数であると思われました。理事長は相続税についてもよく考えたと思われ、苦渋の決断を下した理事長には感服します。しかし、相続税の負担が少なければ、持分のない医療法人へ移行するという考えを持たずに済んだと考えられます。
この事例は、相続税の納税資金対策や財産評価引き下げ対策を早い時期に始めることがとても重要であると改めて感じさせられるものとなりました。